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企業コラボ

おもてなし座談会

おもてなし座談会

Vol.1 株式会社ジェイアール東日本企画

常務取締役営業本部長
チーフ・デジタル・オフィサー(CDO)

高橋 敦司 様

ヒューマンネットワークサービス株式会社

代表取締役社長

明山友美

事業統括本部長

小貫恵美子

初代バトラーとして
「今までにない鉄道の旅」の礎を

明山本日は、私どもの新企画「おもてなし対談」の第一回ゲストとして、ご出演いただきありがとうございます。

高橋こちらこそ、今日はよろしくお願いいたします。

明山JR東日本様とのご縁を頂戴したのは、2013年からでしたでしょうか。豪華寝台列車カシオペアクルーズの「初代バトラー」として、客室乗務員出身の当社のおもてなしコンシェルジュたちと、計4回乗務させていただきました。

高橋そうでしたね。今でこそ「ななつ星」「瑞風」「TRAIN SUITE 四季島」などで、日本のクルーズトレインの新時代を迎えていますが、あの当時はカシオペアクルーズを通じて、今までの鉄道の旅になかったことをやる、というミッションの礎を一緒に築いていただきました。

明山光栄です。ご縁に感謝いたします。

小貫カシオペアクルーズで、お客様と三泊四日の列車の旅をご一緒させていただいたことは、とても新鮮で貴重な経験でした。客室乗務員時代、機内では接客の時間がもっと限られていましたので。

高橋おっしゃる通り、飛行機の旅は、国際線のファーストクラスといえども12時間乗れば終わりですし、気にかけてくれることを好むお客様ばかりとは限らない。そういう意味で、洗練されたサービスではあるけれど、お客様と寄り添う時間の短さという点では、我々の業界とは少し趣が違うかもしれませんね。

小貫はい。だからこそ、やりがいを感じました。基本、「楽しむための旅」がトレインクルーズですよね?よく、高橋さんもおっしゃっていた、「ハレ」と「ケ」で立て分ければ、「ハレ」の旅。飛行機に乗ってこられるお客様は、そういう方ばかりではありません。だからこそ、三泊四日の列車の旅で心ゆくまでお客様に寄り添い、お客様の「ハレの日」に立ち会える喜びは格別なものがありました。

高橋そうおっしゃっていただけるとうれしいですね。一口に「クルーズ」と言っても、船の旅や飛行機の旅ではできないことって何だろう?鉄道の旅だからこそ、できることって何だろう?と、お二人には折あるごとに、さまざまな観点から貴重なご意見を伺いました。

明山単なる移動手段である列車に新しい価値をつける、という高尚なミッションでしたので、私どもも全方位から、おもてなしをさせていただけたことを誇りに思っております。

お客様の五感に響くおもてなし

高橋あの当時、我々が明山さんたちに求めていたのは、いわゆるマナー講座などで体系化されたお辞儀の角度や、笑顔の作り方ではありません。三泊四日もお客様と「時間」「空間」をご一緒するわけですから、人間のサービスでどこまで鉄道の旅の価値を高められるのか、その棚卸がしたかったんです。

明山エアライン時代の接客スキルはもちろん、時に高級ホテルのコンシェルジュのように、時にお客様の旅をアテンドするツアーコンダクターのように、一人何役もの役割を担わせていただき、相当鍛えられました(笑)。

高橋実は僕がやりたかったのは、そこなんですよ(笑)。本来、クルーズってすべて分業なんですけど、三泊四日、本当の意味でお客様に寄り添うということは、一人何役も務まるようじゃないと。コンシェルジュ的な役割はもちろん、ダイニングにも入るし、夜はシェイカーも振る。クリーニングもするし、添乗時はツアーガイドもやれる。そんな優秀なクルーたちを育てる。のちの「TRAIN SUITE 四季島」につながりました。

明山当時私どもは、「お客様の五感に響くおもてなし」をコンセプトに、アメニティーからお食事のメニューに至るまで、細部にわたってこだわらせていただきました。たとえば、事前にお申込みいただいたお客様には、4号車の1室にアロマセラピストのハンドトリートメントやフットトリートメントを受けられるスペシャルスパをご用意させていただいたのですが、おかげさまでご好評をいただき、多くの女性のお客様に喜んでいただくことができました。

小貫ちょうどお客様の中に、お誕生日の記念にご乗車されているご夫婦がいらっしゃったのですが、サプライズでケーキとお花をご用意させていただいたこともあります。他のお客様も祝福の拍手を送って下さる中、「一生忘れられない記念になりました」と喜ばれているお姿に、こちらも思わずもらい泣きしてしまいました。鉄道の旅ならではの、忘れられない光景のひとつです。

高橋新しい鉄道の旅の価値をつくるということは、そういうストーリーを紡いでいくことなのかもしれませんね。三泊四日の旅の中で、どれだけお客様に寄り添い、安心しておくつろぎいただけるか。上野駅から出発して、再び上野駅に戻ってきた時、あなたがいるツアーにまた参加したいと言っていただけることこそ、列車の旅ならではの価値なのかもしれませんね。

おもてなしとは
誰かを笑顔にすること

明山最後に、高橋さんがお考えになる「おもてなし」について、お聞かせいただけますでしょうか?

高橋そうですね。最近の日本は「おもてなし」という言葉がなんだか独り歩きしてしまっているような気がします。「おもてなし」というと、どうしても丁寧なお辞儀とか、笑顔とか、かゆいところに手が届くとか、そういうことをイメージしがちですが、やっぱりホスピタリティの根幹って、ホスピタリティを提供する側が「この人に笑顔になってもらいたい」と、素直に思える心にあるのではないでしょうか。

明山まったく同感です!実は当社も「喜ばれることに喜びを」というクレドを掲げているのですが、お客様を笑顔にすることこそ、私どもの考える「おもてなし」の原点です。

高橋日本もこれだけインバウンドが増えて、今や「おもてなしの国」として世界中から注目をされているわけですが、本当の意味での「おもてなし」は、まだまだ追い付いていないのかもしれませんね。

小貫とおっしゃいますと?

高橋たとえば、街のいたる所で英語や中国語などのアナウンスが当たり前のように流れ、デジタルサイネージでの案内板も数多く目にするようになりましたが、明らかに道に迷って困っている外国人に対して、自分から声をかけられる日本人って、まだまだ少ないと思うんですよ。

小貫確かにそうですね。でも私たちだったら、どうしても見て見ぬふりができない性分なので、ついついお節介を焼いてしまいそうです(笑)。

高橋お二人ならそうでしょうね(笑)。でも実は、その「お節介」こそが大事なんじゃないでしょうか。これからの若い人たちが、本気で「おもてなし」に関わりたい、観光の仕事がしてみたいというのであれば、まずは困っている人に自分から声をかけられるかどうか。見ず知らずの他人に優しくできるかどうか——これに尽きると思います。

明山おっしゃる通りだと思います。そうした「おもてなし指数」の見える化を、私どもの協会やプロダクションなどでも積極的に推進してまいりたいと思います。本日はお忙しい中、たいへんにありがとうございました。

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